一般的に、キューで待機していているメッセージのヘッダには、正しい宛先に配信するため必要とされる情報が全て含まれています。ファイルに保存されているヘッダ(例えば X-MDaemon-Deliver-To ヘッダ)は、MDaemonへ場所と配信先で、メッセージ配信を指示します。しかし、この情報の代わりに特定の代替情報によって、ファイルの送信先を示すことが必要で便利な場合があります。ルートスリップは、そのようなメカニズムを提供します。ルートスリップは、あるメッセージファイルが、どこへまたは誰に送信されるべきかという具体的な指示をMDaemonに与えるファイルです。ルートスリップが、特定のメッセージファイルに用意されると、[.MSG]ファイルにある情報ではなく、ルートスリップによって設定される情報が、どこの誰にそのメッセージを送信するべきかをコントロールします。
ルートスリップファイルは、.RTE拡張子を持ちます。例えば、送信待ちしているメッセージファイルが[MD0000.MSG]である場合、このメッセージに対応するルートスリップファイルは[MD0000.RTE]となり、そのメッセージファイルと同じディレクトリ(メールキュー)に配置される必要があります。
ルートスリップのフォーマットは以下のようになります。
[RemoteHost]
DeliverTo=example.net
ルートスリップのこのセクションは、対応している[.MSG]ファイルが送信されるサーバをMDaemonに指示します。MDaemonは、できるだけ短い時間でメッセージをルートするために、このホストへ直接接続しようとします。1つのホストのみが指定可能です。
[Port]
Port=xxx
このスイッチは、TCP/IP接続および配信の試行が行われるべきポートを指定します。SMTPメールのデフォルトポートは25です。
[LocalRcpts]
Rcpt0=address@example.com
Rcpt1=other-address@example.com
Rcpt2=yet-another-address@example.com
[RemoteRcpts]
Rcpt0=address@example.net
Rcpt1=other-address@example.net
Rcpt2=yet-another-address@example.net
これらのセクションで、関連した[.MSG]ファイルのコピーを受信するローカルおよびリモート受信者を、何人でも指定することができます。ローカルとリモート受信者アドレスは、別々に管理され対応する[LocalRcpts]および[RemoteRcpts]セクションに配置される必要があります。
ルートスリップは、メールの配信またはリダイレクトに対する有効なメカニズムではありますが、一般的には必要ありません。
MDaemonがルートスリップを利用する1つの場合として、[ルートされる]メーリングリストメールが挙げられます。リストメッセージのコピーをリモートホストへ振り分けするように設定されたメーリングリストがある場合、ルートスリップは、この処理を実行するために採用されます。メールが大量の配信先を持つ場合、ルートスリップは非常に効率的なメール配信方法です。なぜなら、そのメールの受信者は何人でも指定でき、メッセージのコピーは1つしか必要ないからです。しかし、すべてのリモートホストで、この種のルーティングが許可されているわけではありません。そのメールのコピーを最終的に各アドレスへ配信するのはそれらのリモートホストなので、いくつかのホストは指定することが可能な受信者の数に上限を設定します。